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2023.05.16

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【求人作成ノウハウ】固定残業代(みなし残業代)の書き方・注意点

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残業代の支払いは企業にとって大きな負担となるため、固定残業代(みなし残業代)の導入を検討する企業が増えています。固定残業代を導入する企業は、求人票や募集要項に必要事項を明示する義務があります。

本記事では、固定残業代(みなし残業代)のメリットとデメリットや、求人票に記載するさいの書き方や注意点について詳しく解説します。

みなし残業代(固定残業代)とは?

従業員が所定労働時間を超えて労働した時には、企業は残業手当を支払わなければなりません。みなし残業とは、事前に一定時間の残業があることを想定して、実際の労働時間に関わらず一定の残業代を支払う制度です。

言い方を変えると、このみなし残業制度を導入していると、一定時間の残業代が賃金に含まれているため、企業は従業員に残業代を支払う必要が無くなります。

みなし残業の種類

みなし残業は、一般的に「固定残業代制」と「みなし労働時間制」の2種類に分けられます。

●固定残業代制
「固定残業代制」は、事業主が従業員に支払う基本給や年俸などに、あらかじめ一定の時間の残業代が含まれる制度のことです。

「固定残業代制」は、原則として月に何時間分の残業代を含むのかを決めておく必要があり、この時間がみなし残業に当たります。固定残業代制は、職種に関わらず適用することができます。

●みなし労働時間制
「みなし労働時間制」では、実際の労働時間に関わらず、残業を含めた毎月の労働時間をあらかじめ設定して給与を支払い、1日8時間を超える時間がみなし残業に当たります。

「みなし労働時間制」には、「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類がありますが適用できるのは、一部の業務や職種などに限定されています。

「事業場外労働のみなし労働時間制」は、営業職など社外での仕事が多く、実際の労働時間の把握が困難な業種や職種向けの制度です。

「専門業務型裁量労働制」は、業務の性質上、業務の進め方や時間配分などを、従業員の裁量にゆだねる必要がある職種が対象の制度です。新商品や新技術の開発業務や情報処理システムの分析や設計業務、テレビ番組のプロデューサーやディレクター、建築士、弁護士、公認会計士など、法律によって定められた19職種のみが適用できます。

「企画業務型裁量労働制」は、事業の運営に関する企画や立案、調査、分析の業務を行う非常に専門性が高い職種のみが対象です。労働基準法では、適用できる労働者の範囲を「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」としていて、概ね3年以上の職務経験者に限られています。

みなし残業(固定残業代)に含まれる割増賃金

一方でパートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所で雇用されている正社員と比べると短い労働者のことをいいます。パートタイマーやアルバイトなど呼び方が違っていても、この条件を満たしていればパートタイム労働法上はパートタイム労働者です。

正社員とパートが違う点

残業代と呼ばれる割増賃金が発生する労働には、下記のような種類があります。

労働の種類 法律で定められている最低割増率
法定労働時間を超えた労働 25%以上
深夜労働(午後10時から朝5時の労働) 25%以上
1ヵ月で60時間を超える労働 50%以上
法定休日以外の休日労働(所定休日労働) 1週間の労働時間が40時間を超える場合は25%
定休日労働 35%以上
これらのうち、みなし残業(固定残業代)にどこまで含むかは、それぞれの企業の規定によって異なります。

【みなし残業】会社側のメリット・デメリット

みなし残業代(固定残業代)を導入すると、会社側には次のようなメリットとデメリットがあります。

正社員で働くメリット

●残業代の計算が不要になる
みなし残業代を導入すると、給与に含まれている残業代までは計算する必要がなくなります。例えば、「月に20時間分の固定残業代を含む」という給与規定で雇用する従業員が残業をした場合、残業時間が20時間以内なら支払われる給与額は変わりません。

これまで残業時間に応じて計算していた残業代や、残業代に伴って変動する社会保険料や所得税の確認といった作業が不要となり、経理業務の効率化が図れます。

●人件費が把握しやすくなる
みなし残業代を導入すると、残業代がほぼ固定となり、従業員に支払う給与総額の大きな変動を抑えることができます。企業の売上や利益に対する人件費の割合は、会社の規模や業種によって大きく異なります。

しかし、企業が支出する経費の中で、人件費が大きな割合を占めるのには間違いありません。みなし残業代を導入すると、人件費を把握できるため企業は事業予測や資金繰りの計画を立てやすくなります。
ただし、みなし残業の導入によって人件費を把握しやすくなりますが、人件費を削減できるわけではないため注意が必要です。

●業務効率が上がる可能性がある
みなし残業代が導入されると、残業をしてもしなくても従業員が受け取る給与額はほぼ一定になります。残業しても受け取れる給与は同じなので、定時が過ぎても仕事をして残業代を稼ごうという従業員が減り、定時で仕事を終わらせて帰ろうと考える従業員が増え、業務効率が向上する可能性があります。

結果的に、職場が長時間労働しにくい雰囲気になり、従業員が働きやすいと感じられる職場環境に改善できる効果も期待できます。また、残業が少なくなれば、光熱費などの経費の削減も見込めるでしょう。

みなし残業代(固定残業代)のデメリット

●人件費が増える可能性がある
みなし残業代は、設定した残業代を含めた給与を支給する制度であり、残業代を支払わなくてもよいものではありません。既定した残業時間に届いていなくても、従業員には残業代を含めた給与を支払わなければなりません。

また、一定時間を過ぎた分の残業代については支払う必要があります。そのため、あまり残業が発生していない企業にとっては、みなし残業代の導入で人件費が増える可能性があります。

●サービス残業が増える可能性がある
みなし残業代の制度を導入しても、一定時間を過ぎた分の残業代については支払われます。

しかし、経営層や管理職のみなし残業代の制度に対する知識が不十分だと、「残業代は給与に含まれているのだから、残業代は支給されない」といった誤った認識により、サービス残業が増える可能性があります。

また、「一定の残業代が支給されているのだから定時で退社するのはおかしい」といった誤解を管理職が持つことで、残業するのが当たり前の風潮が生まれる可能性もあります。

求人票で【みなし残業】について書き方・注意点

みなし残業代(固定残業代)を導入するには、従業員に制度の内容を説明して同意を得る必要があります。同意を得た後は、就業規則や雇用契約書などの書面にして、従業員へ周知しなければなりません。また、求人票に記載する際には、賃金を表示する時点で明示の義務があります。

みなし残業代(固定残業代)の表示義務

みなし残業代(固定残業代)を導入している企業は、求人票や募集要項に次の内容を全て明示する義務があります。

①固定残業代を除いた基本給の額
②固定残業代に関する労働時間と金額の計算方法
③固定残業時間を超える時間外労働や休日労働、深夜労働に対しては割増賃金を追加で支払うという説明

参考:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」

みなし残業代(固定残業代)の表示例

表示義務がある3つの内容を含んだ求人票の正しい記載例は次の通りです。

●正しい例
基本給:月給25万円以上
固定残業代3.8万円(20時間相当分)を含む
20時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給する

下記のような、固定残業代の金額と、それに対応する残業時間が記載されていない表示は適切ではありません。

●不適切な例
基本給:月給25万円以上(固定残業手当を含む)
固定残業分を超える割増賃金は別途支給

表示しない場合のペナルティ

求人票や募集要項に、みなし残業代(固定残業代)について正しく記載されていない場合の企業への罰則については、法律で定められていません。しかし、ハローワークでは労働関係の法律に違反している求人は受理しないこととしていて、民間の職業紹介事業者などにも、それに準じた扱いを求めています。

みなし残業代(固定残業代)の表記が適切でなければ、求職者に不安を与えるだけでなく、入社後に残業代をめぐってトラブルになる可能性もあります。

まとめ

あらかじめ一定時間分の残業代を、給与に含めて支給するみなし残業代(固定残業代)は、正しく運用すれば、人件費の把握が容易になったり業務効率が向上するなどのメリットがあります。ただし運用方法や求人票への記載の仕方などを誤ると、逆にデメリットとなる可能性もあるので注意しましょう。

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