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2023.02.10

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変形労働時間制で働くメリット・デメリット

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変形労働時間制は、業務の繫閑に合わせて従業員の労働時間を調整できる制度です。企業にとっては残業を削減する、従業員にとっては柔軟な働き方ができるといった効果が期待できます。
ただし、企業側と従業員側それぞれにメリットとデメリットがあるので、制度の内容についてしっかりと理解する必要があります。

変形労働時間制とは

労働基準法(第32条)によって、労働時間は1週間40時間、1日8時間と定められています。これを法定労働時間と言います。ただし、一定の条件を満たしている場合には、事業主は法定労働時間を超えて労働者を働かせることができます。

変形労働時間制とは

「変形労働時間制」とは、簡単に説明すると労働時間を1日単位ではなく、週単位・月単位・年単位で計算する制度です。通常は1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働いた場合には、時間外労働となり残業代が発生します。

しかし、業種によっては季節や週によって繁忙期と閑散期の仕事量に大きな差が出る場合があります。このような場合、「変形労働時間制」を採用することで、柔軟に労働時間を振り分けることができます。

変形労働時間制の種類

「変形労働時間制」には、どの範囲で労働時間を調整するかによって、「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定的変形労働時間制」の3つの種類があります。

●1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヵ月の労働時間の上限は、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間となります。この上限時間を日ごとや週ごとに労働時間を振り分けていきます。この制度を採用すれば、繁忙期である月末には10時間労働、それ以外は7時間労働というようにすることができます。

●1年単位の変形労働時間制
一方で、1年単位の変形労働時間制は、1ヶ月以上1年未満で労働時間を設定する制度です。「1年単位の変形労働時間制」は、1年356日の労働時間は2085.7時間、366日(うるう年)は2091.4時間の基準を守っていれば、季節ごとに労働時間を調整することができます。

ただし、制限が定められていて、1日当たりの労働時間は10時間まで、連続勤務は6日までとなっています。

●1週間単位の非定的変形労働時間制
「1週間単位の変形労働時間制」は、従業員が30人未満の小売業や旅館、料理・飲食店などに限定して採用できる制度です。これらの業種は、1週間の中でも曜日や天候によって繁閑の差が大きいため、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができるよう制度が作られました。

ただし、1週間の労働時間が40時間を超えないこと、1日10時間までという制限があります。

フレックスタイム制との違い

通常の労働時間制や変形労働時間制では、事業主が決めた始業時間に合わせて仕事を開始して、終業時間まで働く必要があります。一方で、フレックスタイム制は、労働者が自身で仕事を開始する時間と仕事を終える時間を、自由に決めることができるため柔軟な働き方が可能です。

変形労働時間制で働く労働者は損をする?

前述の通り、労働基準法によって労働時間は1日8時間、週40時間と定められています。変形労働時間制を採用すると、労働時間を1日単位ではなく週や月、年といった一定期間で調整できます。

これにより繫忙期と閑散期の差が大きい業種では、繁忙期に労働時間を増やして、閑散期にはその分の労働時間を減らすことができます。無駄のない働き方によって残業代を削減できるのが、事業主にとっては大きなメリットです。

一方で、勤怠管理が煩雑になる、就業規則の改定が必要となる、一部の部署だけに導入した場合には他の部署と就業時間が合わなくなるなどのデメリットがあります。

メリット ・残業代を削減できる
デメリット ・勤怠管理が煩雑になる。
・就業規則を改正しなければならない。
・1年単位の変形労働時間制の場合には、労使協定を結び、労働基準監督署に届けなければならない。
・他の部署と就業時間が合わなくなり、連携に支障をきたす。

労働者のメリットとデメリット

変形労働時間制が採用されると残業代が少なくなるため、労働者が損をするというイメージがありますが、必ずしもデメリットばかりではありません。

閑散期は労働時間が短くなるため、無駄な拘束時間が少なくなり負担が軽減されます。労働時間が短くなった分を育児や介護、家事、余暇などに時間を充ててワークライフバランスの改善ができます。

メリット ・閑散期には早く帰宅できるので、プライベートが充実する
・過労を防いで健康管理ができる
デメリット ・残業代が少なくなる
・1日8時間以上働かなければならない

変形労働時間制の法定労働時間と残業時間の計算方法

変形労働時間制を導入していても、法定労働時間を超えて働いた分には残業代が発生します。変形労働時間制は、時間外労働の考え方も考え方が通常の労働時間制とは異なるため、残業時間のカウントや運用に誤解が生じる可能性があります。

また、残業代を支払わない口実に、事業主が変形労働時間制を悪用することもあるので注意が必要です。損をしないためにも、残業時間と残業代の計算方法を知っておきましょう。

時間外労働の考え方

変形労働時間制の残業時間は、1日ごとと期間内で分けて考える必要があります。1日ごとの残業時間は、「所定労働時間が8時間以上」に設定されている場合には、所定労働時間を超えた分が時間外労働になります。「所定労働時間が8時間未満」の場合は、8時間を超えた分が時間外労働になります。

「期間内での残業」は、週の平均労働時間が40時間を超えた部分が、時間外労働時間となります。

変形労働時間制の残業割増率

残業代の計算については、通常の労働時間制と同様に、労働基準法で定められた計算方法で求めます。

「残業代」=「残業時間」×「1時間あたりの賃金」×「割増率」

割増率も通常の労働時間制と同じで、時間外は1.25倍、休日は1.35倍、深夜は1.5倍です。

残業時間を所定労働時間から相殺はできない

変形労働時間制は、期間中で所定労働時間を調整できますが、所定労働時間を残業時間と相殺して、増やしたり減らしたりすることはできません。

例えば、ある日の所定労働時間が8時間の場合、10時間働くと残業時間は2時間となります。この時、翌日の所定労働時間から残業した2時間を差し引いて相殺することはできません。
同様に、ある日の所定労働時間が8時間で6時間しか働かなかった場合に、翌日は所定労働時間よりも2時間多く働いたから、前日の不足分と相殺して残業代を支払わないといった取り扱いはできません。

労働条件に納得いかないなら・・転職も視野に入れてみる

変形労働時間制は労働者にも、メリットがあるため正しく運用されている企業であれば全く問題ありません。しかし、残業の考え方やカウントが複雑なため、制度を正しく運用できていない企業もあります。

労働基準法(第37条)には、労働者が法定労働時間を超えて働いた場合や、深夜や休日に勤務をした場合には、残業代を支払う義務があると定められています。前述の通り、変形労働時間制であっても、事業主は法定労働時間を超えた部分は、残業代として支払わなければなりません。

自分で残業代を計算して、支払われていない残業代がある場合には、会社に対して未払い分を請求しても構いません。残業代を請求したら、その後会社に居づらくなると心配する方もいるかもしれませんが、そのような会社には早々に見切りをつけて転職するのも選択肢の一つです。

また、勤めている会社が変形労働時間制を導入することになったけど、1年を通じて同じ勤務時間で働きたいという方も、転職を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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まとめ

変形労働時間制は、残業時間を削減できるため、労働者が一方的に損をするというイメージがありますが、労働者側にとっても閑散期には労働時間が短くなるためプライベートが充実でき、柔軟な働き方ができるといったメリットもあります。それでも変形労働時間制ではなく通常の働き方がしたいという方は、転職を考えてもいいかもしれません。

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