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2022.11.14

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【改正育児・介護休業法】対応はお済みですか?~改正ポイントや対応方法を解説~

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「育児・介護休業法」が改正されて令和4年4月と10月、そして令和5年4月と3段階で施行されます。企業は、法律の改正内容に合わせて、環境の整備や就業規則の見直しなどの対応が必要です。
本記事では、「育児・介護休業法」の改正内容のポイントや対応方法について解説します。

育児・介護休業法とは?

「育児・介護休業法」は、正式な名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、令和2年6月1日から施行されました。法律の目的は、「結婚・出産・子育て」と「仕事」、「家族の介護」と「仕事」のどちらかを選ぶのではなく、両立できるように支援することです。

「育児・介護休業法」には、育児と介護に関してさまざま制度が定められています。主な制度の概要について紹介します。

育児関係の主な制度

「育児・介護休業法」に定められている主な制度は次の通りです。

・育児休業
・所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)など
・所定外労働の制限
・子の看護休暇
・時間外労働の制限
・深夜業の制限

介護関係の主な制度

家族が要介護状態になった際には、「育児・介護休業法」の定められた次のような制度が利用できます。

・介護休業
・所定労働時間の短縮等の措置
・介護休暇
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限

育児・介護休業法の改正ポイント

「育児・介護休業法」が施行されて以降も、出産や育児を理由とする離職は減っていません。厚生労働省の資料を見ると、妊娠・出産を機に退職した理由では「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」と回答したひとが41.5%でした。

そのようなことが、今回の法律改正の背景となっています。改正は2022年4月から、段階的に施行されます。改正ポイントについて解説します。

(令和4年4月施行)育児・介護休業法の改正ポイント

令和4年4月1日から施行された「育児・介護休業法」の改正ポイントは次の通りです。

●育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
これまでの「育児・介護休業法」には、育児休業を取得しやすい環境の整備に関する規定はありませんでした。今回の改正では、事業主に対して、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備することを義務づけています。

また、労働者または配偶者が妊娠や出産を会社に申し出た際に、育児休業制度を面談や書面で周知して、取得意向を確認することも義務づけています。
●有期雇用労働者の「育児・介護休業」取得要件の緩和
改正前までは、有期雇用労働者が育児休業を取得する際には、次の2つの要件を満たす必要がありました。
①引き続き雇用された期間が1年以上
②1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

2022年4月の改正では、「①引き続き雇用された期間が1年以上」について無期雇用労働者と同じ扱いとされ要件が緩和されています。

(令和4年10月施行)育児・介護休業法の改正ポイント

令和4年10月1日からは、「育児・介護休業」の次の点が改正されています。

●「産後パパ育休」の創設
令和4年10月からは「産後パパ育休(正式名称:出生時育児休業)」制度がスタートしました。原則、子どもが1歳(最長2歳)まで取得できる「育児休業」とは別に、子どもが生まれてから8週間までの間に、4週間まで「産後パパ育休」を取得できるようになりました。

取得する申出期間は、原則休業の2週間前までで(労使協定で定めている場合は1か月前まで)、分割して2回取得できます。ただし最初に申し出ることが必要です。

●育児休業の分割取得
改正前までの育休制度では、育児休業は原則として分割取得することができませんでしたが、今回の改正で2回に分割して取得することが可能となりました。

また、育児休業を1歳以降も延長した場合、育休開始日が1歳、1歳半の時点に限定されていましたが、改正により柔軟化されています。

(令和5年4月施行)育児・介護休業法の改正ポイント

令和5年4月1日からは、常時雇用する労働者数が1,000人を超える大企業に対して、育児休業の取得状況について年に1回公表することを義務づけます。公表しなければならない内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

育児・介護休業法の改正ポイントのまとめ

解説してきた通り、「育児・介護休業法」は3段階に分けて改正されます。施行時期と改正の内容についてまとめました。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法について」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」

育児・介護休業法の改正への対応方法

「育児・介護休業法」の改正を受け、企業が対応しなければならない点と具体的な方法について解説します。

育児休業制度の個別周知と取得意向の確認

令和4年4月の改正によって、本人または配偶者の妊娠や出産の申し出をした労働者に対して、育児休業制度を個別に周知して、取得するかどうかの意向を確認することが必要となりました。

周知する内容は次の4点全てです。

①「育児休業」と「産後パパ育休」に関する制度と内容について
②「育児休業」と「産後パパ育休」の申し出る先(人事課や総務課など)
③育児休業給付に関すること
④「育児休業」と「産後パパ育休」期間に本人が負担すべき社会保険料の取扱い

以上について、妊娠や出産の申し出が出産予定日の1か月半以上前に行われた場合には、出産予定日の1か月前までに実施する必要があります。

周知の方法は、面談(オンライン可)、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかです。(FAXと電子メールは労働者が希望した場合に限られます)

就業規則の改定

今回の改正によって、「育児休業取得要件の緩和」や「産後パパ育休制度の新設」などが定められたため、就業規則の見直しと変更が必要となります。

変更した就業規則は、従業員への周知が必要で、常時10人以上の従業員を雇っている事業所は労働基準監督署へ届けなければなりません。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

事業主には、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備することが義務づけられました。雇用環境の整備には、具体的に次のいずれかを実施することが求められています(複数が望ましい)

①「育児休業」と「産後パパ育休」に関する研修の実施する
研修は全従業員が受講することが望ましいですが、少なくとも管理職は研修を受講させましょう

②「育児休業」と「産後パパ育休」に関する相談窓口や相談対応者を設置する
相談窓口を設置する場合には、形式的だけでなく、実質的に対応が可能な窓口を設けることが必要です。また、相談窓口を従業員が利用しやすい体制を整備しましょう。

③自社の従業員が「育児休業」や「産後パパ育休」を取得した事例の収集と提供
自社の「育児休業」や「産後パパ育休」の取得事例を収集して、事例を掲載した書類を配布したり、イントラネットに掲載するなどで従業員が事例を閲覧できるようにします。

収集する事例は特定の性別や職種、雇用形態に偏らず、できる限りさまざまな従業員の事例を収集して、提供しましょう。

④「育児休業」と「産後パパ育休」制度の取得を促進する自社の方針を周知する
「育児休業」や「産後パパ育休」に関する制度と、取得促進に関する会社の方針を記載したもの(ポスターなど)を事業所内やイントラネットへ掲載します。

参考:厚生労働省「中小企業事業主の皆さまへ 改正育児・介護休業法 対応はお済みですか?]

まとめ

本記事では、「育児・介護休業法」の改正ポイントと企業が対応すべき内容について解説しました。法律が改正された背景には、出産や育児を理由として離職する女性が多いことがあげられます。

「産後パパ育休」などの制度によって、夫婦で協定しあって育児ができる環境になると、結果として女性の離職を防ぐことができます。少子高齢化による労働人口の減少は、深刻な人手不足を招き企業にとっては深刻な経営課題となっています。

「育児・介護休業法」の改正に対応して、育児と仕事を両立しやすい雇用環境を整備し、従業員の定着率を向上させることが大切です。

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