人事/経営

2022.06.13

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【離職改善】社員の定着率向上のために担当者ができること

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企業の経営資源は「ヒト・モノ・カネ」と言われていますが、その中でも最も重要なのが「ヒト」である人材です。人材の採用と教育には、たくさんのコストと時間がかかります。せっかく人材を採用しても離職してしまっては、それまでかけたコストや時間が無駄になってしまいます。社員の定着率を高めることは企業にとって大きな課題です。本記事では、社員の定着率を向上させるための方法について紹介します。

1.定着率と離職率の違い

採用した人材がどのくらい定着したのか、どのくらい離職したのかを示す指標に「定着率」と「離職率」があります。定着率と離職率の計算方法と違いについて解説します。

定着率とは

「定着率」とは、従業員がどのくらい職場に定着しているかを表す指標です。定着率が高ければ、従業員の離職が少なく、働きやすい従業員満足度が高い職場といえます。反対に、定着率が低い場合は、従業員が職場に対して何らかの不満を抱えて、離職している可能性があります。

離職者が多ければ、人材不足による生産性の低下や採用コストの増大など、企業経営にとっては大きなマイナスとなるため、定着率は重要な経営指標のひとつとなっています。

定着率は、次の計算で求められます。

定着率(%)=(入社人数-離職者数)÷入社人数×100

例えば、20人入社して、一定期間後に3名退職した場合には、(20-5)÷20×100=75%となり、定着率は75%です。

離職率とは

定着率と対義する指標に「離職率」があります。離職率とは、入社した従業員のうちどのくらいの人数が離職したのかを表しています。したがって、定着している従業員数の指標が定着率で、離職者が指標となっているのが離職率で全く逆の数値と言えます。

厚生労働省が実施している「雇用動向調査」で使用している離職率の計算方法は、「離職率(%)=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」です。一方で、企業が独自に離職率を計算する場合には、計算する期間も分母となる労働者数にも定めはなく、企業によって異なります。

2.従業員の定着率向上による企業側メリット

従業員の定着率を向上させることは、企業にとって次のようなメリットがあります。

優秀な人材の流出防止

従業員の離職による人材の流出は、顧客や企業情報、仕事のノウハウなども一緒に流出してしまうリスクがあります。企業にとって優秀な人材が離職した場合には、その損失はさらに大きくなります。

また、人材の流出は人材不足による生産性の低下や売上減少など、経営に影響を及ぼす可能性があります。定着率向上によって、人材の流出を防止することで、これらのリスクを回避することができます。

採用コスト・教育コストの削減

離職者が出ると、新たに人材を採用して教育を行わなければなりません。日本では少子高齢による労働人口減少が深刻な社会問題となっています。その結果、新卒採用も中途採用も売り手市場となり、採用コストの増加が企業の経営課題となっています。

そもそも定着率が低い企業は、働く人にとって魅力が少ないケースが多く、新たな人材を採用できるとは限りません。採用と教育には多額のコストが必要なため、定着率を向上させることでこれらのコストを削減することができます。

従業員のモチベーションの維持・向上

離職者が多い職場では、離職者の業務が他の従業員に割り振られ負担が大きくなります。そのため、従業員のモチベーションが低下して、次の離職につながってしまうこともあります。また、離職率が高い職場では、次々と辞めていく従業員を見るため、働くことの意義や会社を信頼する気持ちが徐々に薄れていきます。

一方で、定着率の高い職場は、それぞれの従業員のモチベーションが高く、組織力が発揮できます。このように企業の組織力強化には、定着率を高め、人材が流出することを防ぐことが不可欠です。

顧客満足度の向上

優秀な人材は、顧客への対応や接客の質が高い傾向にあります。また、同じ社員がずっと担当するだけでも、顧客は安心感を持ち満足度が向上します。従業員が高いモチベーションで働けることで、企業の組織力が高まり顧客により良いサービスを提供できます。

3.定着率が下がってしまう原因とは?

厚生労働省が調査している「令和2年 雇用動向調査結果の概要」によると、転職した人が前職を辞めた理由で多かったものには、次のような理由がありました。

職場の人間関係

転職者が前職を辞めた理由として、男性で8.8%、女性の13.3%が「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答しています。会社では、上司や同僚とコミュニケーションを取る機会が多いため、人によってはストレスを感じることがあります。心理的なストレスは、目に見えないため、肉体的なストレス以上に注意が必要です。

給与や待遇への不満

「給料等収入が少なかった」は、男性が9.4%、女性が8.8%でした。生活のためのお金を得ることは、働くことの大きな目的です。同業他社の同職種と比べて給料が低い、給料が上がらない、残業代が出ないなど収入に対する不満を抱えてしまうと、離職の原因となりかねません。

労働時間や休日への不満

「労働時間・休日等の労働時間が悪かった」は、男性で8.3%、女性で11.6%でした。労働時間が長い、休日が取れないなど、労働環境が悪いと心身ともに大きなストレスとなります。仕事と生活のバランスを取るワークライフバランスの実現は、国が掲げる「働き方改革」を企業が進めるためにも取り組むべき課題です。

仕事内容への不満

「仕事の内容に興味が持てなかった」は、男性が4.7%、女性は5.2%でした。「入社前に聞いていた仕事内容と違っていた」「いきなり難しい仕事を担当させられた」など、求人の時にしっかりと仕事内容について説明していないとミスマッチが起こる可能性があります。

参考:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」

4.定着率を上げる方法

従業員の定着率を上げるためには、離職した社員の離職理由を調査して自社の課題を把握することが大切です。この章では課題の対策について紹介します。

給与や福利厚生の充実

収入や待遇に対して従業員が不満を持っている場合には、給与や福利厚生の改善の検討が必要です。しかし、会社の業績によっては給与を上げるのが難しい場合もあるでしょう。しかし、離職者が出れば生産性が下がって、業績の維持や向上は見込めません。

給与に関しては、成果に見合った報酬が得られるような仕組みを整備することが大切です。従業員のモチベーションを高めるためにも、人事評価制度の見直しやインセンティブや報奨金制度の導入などを検討してみてはいかがでしょうか。

ワークライフバランスの実現

国がワークライフバランスを推進していますが、最近では働く側もワークライフバランスを意識する人が増えています。ワークライフバランスを実現して定着率を向上させるには、企業が積極的に働き方を見直すことが必要です。ワークライフバランスを実現する具体的な方法としては、次のようなものがあります。

・出産、育児休暇制度、介護休暇制度
・短時間勤務制度
・フレックスタイム制度
・リモートワーク制度
・棚卸による無駄な業務の削減
・業務分担の適正化

コミュニケーションの活性化

職場の人間関係が離職理由の場合には、社内のコミュニケーションが不足している可能性があります。上司と部下が1on1ミーティングする機会を作る、チームのメンバーでディスカッションをする機会を作るなどを行うことで、職場のメンバー同士の意思疎通がしやすくなります。また違う部署のメンバーと交流することで、新たな気づきやアイディアが生まれる可能性もあります。

最近では新型コロナウイルス感染症の感染予防策として、リモートワークが増えてコミュニケーションの機会が少なくなっていますが、WEB会議システムやチャットツールを活用してコミュニケーションを取るようにしましょう。

まとめ

従業員の定着率を向上させることは、経営資源の中で最も大切なヒト(人材)を確保する以外にも、従業員のモチベーション維持や顧客満足度の向上など企業にとってさまざまメリットがあります。従業員の定着率を高めるためには、まずは離職した従業員の理由を分析して、自社の課題を把握することが大切です。課題が見つかったら、どのような対策を講じれば良いのか検討しましょう。今回、ご紹介した方法を参考にしてみてください。

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