人事/経営

2022.05.12

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2022年4月1日施行「育児介護休業法の改正」について

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2022年4月1日から改正「育児・介護休業法」が施行されました。今回の改正は3段階で施行され、今後も内容の変更に都度対応する必要があります。人事労務を担当する部署は、改正された法律の内容について理解して、社内の体制を整備する必要があります。

この記事では、「育児・介護休業法」の改正内容と注意するべきポイントについて解説します。

【育児・介護休業法】法改正の背景

「育児・介護休業法」が改正され2022年4月から施行されましたが、「育児・介護休業法」は、これまでも何度も改正が行われています。この章ではこれまでの改正の流れや、その背景について紹介します。

育児・介護休業法とは

「育児・介護休業法」は、1992(平成4)年4月に施行された「育児休業法(正式名称:育児休業等に関する法律)」が、1995(平成7)年に改正されて「育児・介護休業法(正式名称:育児休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)となりました。

法律の目的は、育児や家族の介護をする労働者の雇用の継続と再就職の促進を図って、職業生活と家庭生活の両立を通じて、福祉の増進と経済と社会の発展を目指すことにあります。

これまでの主な法改正内容

「育児休業法」が施行された1992(平成4)年4月当時は、従業員数が常時30人以上の事業所が適用の対象でした。

1995(平成7)年4月に育児休業法が改正されて、現在の「育児・介護休業法」となりました。介護部分については1999(平成11)年4月からの施行です。また、この改正により従業員数に関わらず全ての事業所が法律の対象となっています。

1999(平成11)年4月の改正で、介護休業制度の義務化と深夜業の制限制度が創設されました。深夜業の制限制度は、小学校に入学する前の子どもを持つ従業員から、請求があった場合には原則として深夜(午後10時から午前5時)働かせてはならないという制度です。

2002(平成14)年4月の改正では、小学校に入学する前の子どもを持つ従業員から請求があった時には、看護休暇を与える努力義務と時間外労働の制限が創設されました。また、子どもが3歳未満の場合には、事業所が選択して短時間勤務、フレックス、始業終業時刻の変更などの措置を講じることが義務付けられました。

2005(平成17)年4月の改正で、努力義務だった子どもの看護休暇が義務化。また、これまで子どもが1歳になるまでだった育児休業期間が、1歳6カ月になるまでに延長することが認められました。休業の対象者も、有期雇用者まで拡大されています。

2010(平成22)年6月の改正では、両親が共に育児休業を取得する場合に、子どもが1歳2ヵ月に達するまでの間に、1年間の育児休業を取得することができる「パパ・ママ育休プラス」が創設されました。他にも、所定外労働の免除制度や法令違反をした企業の公表などが法改正により新たに施行されています。

2017(平成29)年1月の改正では、保育所に入れないなどの場合には、従業員の申請により最長2歳まで育児休業を延長することが認められました。また、この場合に育児休業給付金を最長2歳まで支給することも定められています。

2021(令和3)年1月の改正では、子どもの看護休暇や介護休業を1時間単位で取得できるようになりました。また看護休暇を取得できる従業員の範囲も全ての従業員に拡大されました。

法律改正の背景

前項で紹介した通り「育児・介護休業法」は、これまでに何度も改正を重ねていますが、その背景には、次のようなものがあげられます。
・急速に進む少子高齢化社会
・高齢者の増加による介護対策の必要性
・女性の雇用確保と活躍の場の拡大
・ワークライフバランスの実現

【2022年4月】育児・介護休業法の改正内容

「育児・介護休業法」は、2021(令和3)年6月にも改正され2022(令和4)年4月からは、次の項目について施行されます。

雇用環境整備、個別の周知や意向確認の措置の義務化

育児休業取得の申し出がしやすい環境を整備するために、事業主は次のいずれかの措置を講じなければなりません。

①育児休業や産後パパ育休に関する研修の実施
②育児休業や産後パパ育休に関する相談窓口の設置
③自社の労働者の育児休業や産後パパ育休の取得事例の収集・提供
④自社の労働者へ育児休業や産後パパ育休の取得促進に関する方針の周知
*産後パパ育休は2022(令和4)10月から施行

また、妊娠や出産(本人または配偶者)の申し出があった労働者に対する休業の周知や休業取得の意向確認を個別に行うことが義務付けられました。周知する事項と周知や確認の方法は次の通りです。

●周知事項
育児休業に関する制度、育児休業の申し出先、育児休業給付に関すること、労働者が負担すべき社会保険料の取り扱い

●個別周知や意向確認の方法
①面談(オンラインも可)
②書面交付
③FAX
④電子メールなどのいずれか
*③と④は労働者が希望した場合

有期雇用労働者への取得要件の緩和

これまで、育児休業を取得するには、①引き続き雇用された期間が1年以上、②子どもが1歳6か月になるまでの間に労働契約が満了することが明らかでないという2つの要件がありました。

2022(令和4)年4月からの改正では、①の要件が撤廃されて、②のみとなり無期雇用労働者と同じ扱いとなります。

2022年10月、2023年4月も改正が続く

今回の「育児・介護休業法」の改正は、2022(令和4)年4月、2022(令和4)年10月、2023(令和5)年4月と3段階で施行されます。

2022年10月に施行される内容

産後パパ育休(出生時育児休業)が新たに創設され、育児休業とは別に取得することができるようになります。産後パパ育休の対象期間は、子どもの出生後8週間以内で4週間まで取得可能です。

また、今回創設された産後パパ育休も、これまでの育児休業も2回に分割して取得することができます。

2023年4月に施行される内容

2023(令和5)4月からは、育児休業取得状況の公表が義務化されます。これにより、従業員数が1,000人を超える企業は、育児休業など取得状況を年1回公表することが義務づけられます。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

改正について人事労務担当者が注意するポイント

今回の「育児・介護休業法」の改正を受けて、人事労務担当者は次の点に注意する必要があります。

就業規則や労使協定の見直し

現在の就業規則に次のような要件が記載されている場合には、その記載を削除する必要があります。

有期雇用労働者にあっては、次のいずれにも該当するものに限り休業をすることができる。
●育児休業

(1) 引き続き雇用された期間が1年以上 ←削除

(2) 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
●介護休業

(1) 引き続き雇用された期間が1年以上 ←削除

(2) 介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない


変更した就業規則は、労働者に周知することが必要となります。また、常時10人以上の労働者を雇用している事業主は、労働基準監督署への届け出も必要です。

対象条件や企業の義務を確認する

2022(令和4)年4月から有期雇用労働者が「育児・介護休業」を取得できる要件が緩和されます。しかし、労使協定の締結によって、引き続き勤続年数1年未満の従業員を対象から除外することもできます。

有期雇用労働者を「育児・介護休業」が取得できる対象に含めるかを、労働組合と協議してその内容を就業規則に反映させるなどの整備が必要です。

わかりやすく周知する

今回の改正では、「育児・介護休業」の個別の周知や意向確認が義務化されています。従業員にわかりやすく周知する前には、会社の経営層や人事部、労働者が、法律の改正で何が変わったのかを認識しておく必要があります。

特に管理職が新たなルールを把握していないと、育児休業や産後パパ育休の取得を認めなかったり、分割取得を拒否したりしてしまうかもしれません。最悪の場合には、マタニティーハラスメントやパワーハラスメントとして、トラブルに発展する可能性もあります。

まとめ

今回は、2022(令和4)年4月に改正された「育児・介護休業法」について、改正のポイントや対応すべき点について紹介しました。改正された背景には女性の活躍の場の拡大やワークライフバランスの実現、働き方改革への対応などがあります。

子育て世代が働きやすい環境を整備することは、企業にとって雇用の安定や維持につながります。厚生労働省のホームページには、「育児・介護休業法」に関する資料が動画が公開されていますので、上手く活用して社内の対応を進めましょう。

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