仕事をスムーズに進めるための報連相とは?
多くの企業では、新入社員研修で「報連相」が大切と教えているのではないでしょうか。しかし、「報連相」がなぜ大切なのかや、「報連相」を怠るとどのような問題が起こるのかなどについては、意外に知らないという方も少なくないのではないでしょうか。この記事では「報連相」の目的や仕方のポイントなどについて解説します。
1.報連相(ホウレンソウ)とは?
「報連相(ホウレンソウ)」とは、「報告」「連絡」「相談」を略したもので、ビジネスにおけるコミュニケーションスキルの基本とされています。いつ誰が考えついたかは、はっきりとわかりませんが、一般的に広く知られるようになったのは、昭和61(1986)年に山種証券社長の山崎富治著「ほうれんそうが会社を強くする―報告・連絡・相談の経営学」が出版されてからです。
ビジネスシーンにおける報連相
ビジネスシーンでは、報告・連絡・相談は次のように使われます。
◇報告:仕事の進捗状況や結果、実績などを上司に伝えること。
◇連絡:仕事に関する状況や情報を上司や周囲の社員に伝えること。
◇相談:仕事において不明点やトラブルなど自分だけで遂行することが困難な時に、上司や先輩社員にアドバイスをもらうこと。
2.報連相(ホウレンソウ)の目的とは?

ビジネスシーンで重要とされる「報連相」ですが、どのような目的で行われるのでしょうか。
報告の目的
「報告」の目的は、自分が今どのような状況であるのか、過去からの経緯と結果も含めて現状を把握して、方向性と意志を伝えることです。ビジネスでは、「現状」を上司やその他関係者へ正確にそして敏速に伝えることを指します。
小さな事でも上司に報告することで、上司は的確な指示やアドバイスを与えることができます。トラブルが発生してしまった時にも、すぐに報告することで迅速に適切な対応ができます。この報告のタイミングを逃してしまうと、状況がさらに悪い方向へ向かう可能性があります。
連絡の目的
「連絡」の目的は、業務を遂行する上で情報を必要としている人全員に、正確に情報を伝えて共有することです。「報告」と「連絡」は、似ているように思いますが、「連絡」は事実を周知することが目的となります。そのため「報告」と違い、自分の考えや進捗状況などは必要ありません。基本的に、関係者に共有すべき情報を、客観的に伝えることが必要です。
相談の目的
「相談」の目的には、主に次のようなものがあります。
①仕事でわからない情報や知識などについて質問する(情報を得るため)
②自分ひとりでは仕事をどう進めていいのかわからないので相談する(アドバイスを受けるため)
③そもそもどう進めていいのかわからなくて相談する(未経験の仕事や案件で経験者に取り組みの方向性を聞くため)
④自分の考えを整理、確認するために相談する(考えを整理して明確にするため)
⑤自分のアイディアや考えをさらに良くするために相談する(一緒に考えてもらって解決策を得る)
なお、「報連相」の目的を「上司が状況判断するために必要な情報を部下からの自発的な伝えること」を習慣的に行わせるための「しつけ」と誤解して捉えている企業も少なくありませんが、前述の山崎富治著「ほうれんそうが会社を強くする―報告・連絡・相談の経営学」では、上司が「嫌な情報や喜ばしくないデータ」を遠ざけずに問題点を積極的な姿勢で改善していくことで、全ての社員が報告・連絡・相談が行える風通しの良い職場環境をつくるための手段として「報連相」を勧めているのであって、部下の努力目標ではありません。
3.報連相を怠ったことにより生じる問題
ビジネスでは「報連相」が大切と言われますが、なぜ大切なのでしょうか。「報連相」を怠ることで生じるさまざまな問題について紹介します。
上司が部下の状況を把握できない
「報連相」が行われてないと、上司は部下の状況を把握することができません。その結果として、適切な指導やアドバイスができず、業務効率が悪くなります。また、部下が間違った判断で業務を進めてしまい問題が発生する可能性もあります。
上司や周囲の人に相談ができない状況では、部下はひとりで問題や悩み、不安を抱えてしまいます。最近では、仕事のストレスから心の病気となり、休職や離職をしなければならない状態の人も増えています。
問題が発生した時に原因がわからない
「報連相」が適宜適切に行われていないと、問題が発生した際に、どのような場面でどんな原因で発生したのか把握できません。そのため問題解決の方法がわからず、解決までの時間を要します。
トラブルがさらに大きくなる
「報連相」をしっかりと行っていれば、問題が発生する前に解決できることも、「報連相」を怠ると、トラブルとなる可能性があります。トラブルが発生することで業務上の大きな損失が発生したり、取引先の企業に迷惑をかけることも考えられます。
組織の連携力が弱まる
ほとんどの仕事は、個人ではなく組織やチームで協力して行っています。「報連相」を怠ると情報の共有ができず、組織の連携力が弱まります。その結果、メンバーそれぞれが勝手に業務を進めてしまい効率が悪くなったり、メンバー間のコミュニケーションが少なくなることで関係が悪くなることもあります。
4.報連相(ホウレンソウ)の仕方
「報連相」の基本的な仕方について説明します。
報告の仕方
報告には、口頭で伝える方法と文書で伝える方法とがあります。口頭で伝える場合には、簡単な内容であっても、他の業務で忙しい場合もあるため、相手のスケジュールを確認することが大切です。
口頭であっても文書であっても、まず最初に報告すべき情報と報告の必要がない情報を整理しましょう。報告に必要がない情報まで伝えてしまうと、無駄な時間がかかってしまうばかりか、本当に必要な情報が伝わらない可能性があります。
文書で報告する際には、表やグラフを用いたり、情報量が多い時には資料を活用するなど、わかりやすい内容になることを意識しましょう。
自分のことを理解するためには、自己分析を行うことが必要です。自己分析とは、これまでの経験や実績などを振り返って、自分の特徴を整理することです。
具体的には、過去・現在・未来・価値観を軸にして分析を行いましょう。
連絡の仕方
連絡をする際に、最も注意するポイントはスピードです。連絡すべき情報は、迅速に伝える必要があります。また、正確かつ簡潔であることも大切です。基本的には6W2Hと呼ばれるポイントを意識すると良いでしょう。
6W2H
Who(誰が?)・What(何が?)・Why(なぜ?)・When(いつ?)・Where(どこで?)・Which(どっちが?)・How(どのように?)・How much(いくら)相談の仕方
相談する際には、次の3つのポイントを心がけることが大切です。
①相談する内容の要点をまとめる
質問や問題点などの内容は具体的にしておきましょう。
②簡潔に要領よく話す
相談する際には、「どこがどう問題なのか?」や「自分はどう考えているのか」をしっかり筋道をたてて話しましょう。内容を簡潔に伝えないと、相談を受ける相手はあなたが何を相談したいのか理解できません。
③必要がない話はしない
相談をする時には、相談の内容に無関係な話は必要ありません。自分が持ってる情報を整理してわかりやすく伝えましょう。
結論から伝えるのが大切
報告・連絡・相談のいずれも、伝える順番が大切です。ビジネスシーンでは、結論を最初に話して、その後に詳細や理由を伝えるのが基本的なルールです。業務で忙しい状況で、結論がわからないまま、状況や考えを話すのは、話の主旨が伝わらないばかりか、相手にストレスを感じさせてしまいます。
また、「事実」と「意見」を分けて伝えることも大切です。意見を伝えること自体は悪いことではないですが、意見が交じると正しい情報が伝わりません。意見を伝えるときには「これは私の意見なのですが・・・」など前置きしてから話しましょう。
まとめ
「報連相」は、ビジネスでは絶対に必要なコミュニケーションスキルです。「報連相」を怠ると、業務の進行に影響が出るだけでなく、さまざまなトラブルの原因になります。社内では「報連相」の必要性を教える側の上司も、教えられる側の部下も、その目的や重要性を十分理解することが大切です。