人事/経営

2021.11.29

+PICK

【社会保険適用拡大】2022年10月からどう変わる?

BaseUpp

現在従業員501人以上の大企業に義務付けられている、短時間労働者の社会保険加入が、法律の改正によって段階的に中小企業にも適用が拡大されます。
対象となる企業は、変更内容やスケジュールなどを確認して準備を進める必要があります。今回は、法律改正の内容や適用のタイミング、適用拡大による影響、必要な準備や手続きについて詳しく解説します。

まずはチェック!社会保険加入の適用拡大の内容

法律の改正によって、2022年10月からパートやアルバイトなどの短時間労働者への社会保険加入の適用範囲が拡大されます。まずは現行の適用要件と法律改正後の適用要件をチェックしておきましょう。

現行の短時間労働者の社会保険適用範囲

パートやアルバイトなど短時間労働者の社会保険加入について、現在は特定適用事業所で一定の要件を満たす従業員が対象となっています。特定適用事業所とは、短時間労働者を除く社会保険の被保険者が常時501人以上の事業所を指します。
また、短時間労働者が社会保険適用となる一定の要件とは以下のようなものです。
●週の所定労働時間が20時間以上
●継続して1年以上雇用される見込み
●月額賃金88,000円以上
●学生ではない
なお、特定適用事業所でなくても、労使の合意によって短時間労働者の社会保険加入の申請が行えます。

2022年10月から拡大される社会保険の内容

法律改正によって、短時間労働者の社会保険の適用は、2022年10月と2024年10月と段階的に拡大される予定です。現行の制度との変更点は次の通りです。

①2022年10月からの変更点
<事業所の規模>
(変更前)短時間労働者を除く社会保険の被保険者が常時501人以上
(変更後)短時間労働者を除く社会保険の被保険者が常時101人以上

<勤務期間>
(変更前)継続して1年以上雇用される見込み
(変更後)継続して2か月以上雇用される見込み

②2024年10月からの変更点
(変更前)短時間労働者を除く社会保険の被保険者が常時101人以上
(変更後)短時間労働者を除く社会保険の被保険者が常時51人以上

社会保険適用拡大による影響

短時間労働者への社会保険適用拡大は、企業や従業員にどのような影響があるのでしょうか。
事業主の負担増加
社会保険料の半分は事業主の負担です。短時間労働者が新たに社会保険に加入することで、会社の負担は増加することになります。そのため、事前に社会保険加入となる人数や保険料を把握しておくことが必要です。

従業員の満足度UP
これまで社会保険に加入していない人は、自分で国民健康保険や国民年金を支払う必要があります。これが適用拡大によって社会保険に加入することになると、保険料の半分は事業主が負担します。また社会保険に加入することで、将来受け取れる年金額が変わってきます。このように社会保険加入によって、従業員の満足度が向上して職場への定着や求人への応募者増加が期待できます。

適用拡大のスケジュール

短時間労働者の社会保険適用要件の拡大のスケジュールと内容を表にしてまとめました。参考にしてください。

要件 2016年10月~(現行) 2022年10月~ 2024年10月~
事業所の規模 従業員数501名以上 従業員数101名以上 従業員数51名以上
労働時間 週の所定労働時間が20時間以上 変更なし 変更なし
賃金 月額88,000円以上 変更なし 変更なし
勤務期間 継続して1年以上雇用される見込み 継続して2か月以上雇用される見込み 継続して2か月以上雇用される見込み
適用除外 学生でないこと 変更なし 変更なし

適用拡大による企業の対策ポイント

2022年10月からの短時間労働者への社会保険適用拡大に向けて、従業員数が101名以上の企業は、事前に準備を進めておく必要があります。必要な準備について解説します。

加入対象者の把握

まずは、新たに社会保険加入の対象となる従業員を把握しましょう。対象となるのは、次の要件を全て満たしているパートやアルバイトなどの短時間労働者の方です。

①週の所定労働時間が20時間以上
週所定労働時間が40時間の企業の場合、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満のパートやアルバイトの方が対象となります。この時間は契約上の所定労働時間であって、残業など臨時で働いた時間は含まれません。なお、契約上は20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続で20時間以上となって、引き続き20時間以上になると見込まれる場合は社会保険の加入対象となります。

②継続して2か月以上雇用される見込み

③月額賃金88,000円以上
月額賃金とは、基本給および諸手当を指しています。賞与や時間外労働、休日出勤、深夜労働に対して支払われる賃金は含まれません。また、通勤手当や家族手当、皆勤手当てなど法律で最低賃金に算入しないと定められているものも含みません。

④学生ではない
だし、休学中の学生や夜間学生は加入の対象となります。

社会保険料負担額の把握

新たに社会保険加入の対象となる人数が分かれば、事業主が負担する社会保険料を把握して準備しておきましょう。社会保険料の試算は、厚生労働省の「社会保険拡大特設サイト」にある「社会保険料かんたんシミュレーター」で計算することができます。

従業員とのコミュニケーション

社会保険料の半分は事業主が負担しますが、残りの半分は従業員の給与から天引きすることとなります。そのため、対象となる従業員には説明を行うことが必要です。
説明のポイントは、次の3点です。
①社会保険の新たな加入対象者であること
②社会保険に加入するメリットについて
③これまで配偶者の扶養の範囲内で労働時間を抑えて働いていた従業員には、今後の労働時間について

なお説明には、厚生労働省の「社会保険拡大特設サイト」でダウンロードできる「社会保険適用拡大ガイドブック」を利用すると良いでしょう。

書類の作成と届け出

社会保険適用拡大の対象となる企業は、被保険者資格取得届の提出が必要となります。2022年10月から適用拡大となる従業員数101~500人の企業には、2022年8月までに日本年金機構から対象であることを知らせる書類が届きます。
「被保険者資格取得届」に、被保険者の氏名や生年月日、取得年月日、報酬月額などを記入して、2022年5月までにオンラインで届け出しましょう。なお、従業員数が51人~100人の企業の「被保険者資格取得届」の届け出時期は2024年です。

活用できる支援や助成金

企業が社会保険適用拡大に向けた準備を円滑に進められるように、厚生労働省では次のようなさまざまな支援を用意しています。積極的に活用しましょう。

■専門家活用支援事業
年金事務所を通じて、社会保険適用拡大について詳しい社会保険労務士を無料で派遣してくれます。社会保険適用拡大に向けた対応の検討、対象となる従業員への説明のサポート、手続きや届け出に関するアドバイスなどについて相談できます。申し込みは近くの年金事務所です。

■よろず支援拠点
「よろず支援拠点」は、中小企業や小規模事業者の経営相談所です。全国47都道府県に設置されています。売り上げ拡大や経営改善などの経営課題の解決などの専門的な相談をすることができ、相談は何度でも可能で無料です。

■中小企業生産性革命推進事業(補助金)
「中小企業生産性革命推進事業」は、中小企業基盤整備機構が中小企業の生産性向上のために継続的に支援する制度です。「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」の3つの補助金が用意されています。

■キャリアアップ助成金
短時間労働者の労働時間を延長した場合や社会保険の選択的適用拡大を行った場合には「キャリアアップ助成金」を申請できます。
キャリアアップ助成金には、「短時間労働者労働時間延長コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「正社員化コース」などのコースが用意されています。
例えば「短時間労働者労働時間延長コース」では、パートやアルバイトなどの短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長して、新たに社会保険に適用した場合に1人当たり225,000円の助成金が支給されます。問い合わせ先は、各都道府県労働局またはハローワークです。

参考:厚生労働省 「社会保険適用拡大 特設サイト」

まとめ

現在、従業員が501名以上だった短時間労働者の社会保険加入が、法律改正によって段階的に拡大されることになりました。従業員101名以上の企業は適用拡大が始まる2022年10月まで残り1年もありません。今回の記事では適用拡大に向けた進め方についても紹介しています。参考にして早めに準備を進めてみてはいかがでしょうか。

BaseUpp