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2021.11.16

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最低賃金アップ!パートの働き方はどうなる?

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2021年10月から最低賃金がアップされました。パートタイムで働いている方にとって、時給が上がるのはうれしいことですが、場合によっては逆に収入が減ってしまう可能性があります。
なぜ時給がアップするのに収入が減ってしまうのでしょうか。今回は、最低賃金のアップによってパートタイムで働いている方が気をつけなければならない点について解説します。

2021年10月から上がった最低賃金

<最低賃金とは>
最低賃金とは、最低賃金法に基づいて定められた「雇用主が労働者に支払う賃金の最低額」のことです。
最低賃金には、各都道府県別に決められる「地域別最低賃金」と、産業別に決められる「特定(産業別)最低賃金」の2つがあります。

■地域別最低賃金
「地域別最低賃金」は、産業や職種に関わりなく、各都道府県にある事業場で働くすべての労働者と雇用主に適用される最低賃金です。各都道府県に1つずつ全部で47の最低賃金が定められています。

■特定(産業別)最低賃金
「特定(産業別)最低賃金」は、関係する労働者と雇用主の申し出に基づいて、地域別最低賃金よりも高い最低賃金を定めることが必要と認めた特定の産業について設定されています。全国で228件の特定(産業別)最低賃金が定められています。(令和2年9月1日現在)


<地域別最低賃金はどうやって決められる?>
では、最低賃金はどのように決められているのでしょうか。
今回はパートで働く方のほとんどが適用される地域別最低賃金について決定方法と決定基準を解説します。

地域別最低賃金の決定方法

地域別最低賃金は、厚生労働省の最低賃金審議会が引き上げ額を話し合います。審議会には、中央最低賃金審議会と地方最低賃金審議会とがあり、中央審議会から地方審議会に対して、最低賃金引上げ額の目安が提示されて、地方審議会では、その目安を参考にしながら地域の実情に応じた賃金額の改正のための審議を行います。

地域別最低賃金の決定基準

地域別最低賃金は、その地域における「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を総合的に勘案して定めるとされています。

<2021年10月からの地域別最低賃金>
2021年10月から地域別最低賃金が引き上げられました。これまでの全国平均の最低賃金902円から28円引き上げられて、930円となっています。この引き上げ額は過去最高の金額です。
地域別最低賃金は各都道府県毎に金額が異なりますが、最も高い東京都で1,041円、最も低い高知県と沖縄県で820円となっています。地域別最低賃金は、厚生労働省のホームページに一覧が掲載されています。
なお、2022年10月には、パートタイムなど短時間労働者への社会保険の適用拡大も予定されています。

厚生労働省「最低賃金全国一覧」


パートスタッフが気をつけるべきこと

時給が上がることはパートタイムで働いている方にとってはうれしいことですが、気をつけなければならない点もあります。

パートタイムというと、主婦の方の働き方というイメージがあると思います。
主婦の方が、パートタイムでの働き方を選ぶのには、家事や育児がありフルタイムで働けないということもありますが、扶養内に収入を抑えたいという税制上の理由もあります。
これまで扶養内で働いていた方は、時給が上がることで扶養から外れてしまい、税金や社会保険料の支出が増える可能性があります。そのため、扶養内に抑えたい場合には、勤務時間を減らす必要が出てきます。

例えば、これまで時給900円で月平均92時間働いて年収100万円未満になるようにしていた方が、時給が928円に上がると同じ勤務時間では年収が100万円を超えてしまい自身で住民税を納める必要が出てきます。

時給900円×92時間×12か月=年収993,600円
時給928円×92時間×12か月=年収1,024,512円
具体的には次の章で説明します。

扶養の「◯◯万円の壁」とは?

「〇〇万円の壁」という言葉を聞いたことがあると思います。「〇〇万円の壁」とは、年収がその金額を超えると、税金や社会保険料を支払う義務が生じたり、配偶者や家族の負担が増えることを指しています。
「〇〇万円の壁」には住民税、所得税、社会保険料、配偶者特別控除に関して、次の5つの壁があります。

100万円の壁
100万円の壁は住民税に関する壁です。
これは、「給与所得控除額65万円」と「住民税の非課税控除額35万円」を合計した金額です。パートタイムの年収が100万円を超えると住民税を支払う義務が生じます。

103万円の壁
103万円の壁は所得税に関する壁です。
これは「給与所得控除額65万円」と「所得税の基礎控除額38万円」を合計した金額です。令和2年分からは「給与所得控除額55万円」と「所得税の基礎控除額48万円」となっていますが合計額は変わりません。パートタイムの年収が103万円を超えると所得税の納税義務が生じます。

106万円の壁・130万円の壁
106万円の壁と130万円の壁は、いずれも社会保険に関する壁です。
次の条件を満たす場合にはパートタイムの年収が106万円を超えると、社会保険料を支払うことが必要となります。

■勤務先の社会保険加入者が501名以上であること
■1年以上勤務する見込みがあること
■労働時間が週20時間以上であること
■学生でないこと

上記の条件を満たしていない場合には、パートタイムの年収が130万円を超えると社会保険料の支払い義務が発生します。
なお法律改正によって2022年10月からは、勤務先の社会保険加入者が101~500名の企業で働くパートタイムなど短時間労働者へも、社会保険の適用が拡大されます。

150万円の壁
これまでの壁は、パートタイムで働く主婦の負担が増えるものでしたが、150万円の壁は配偶者特別控除に関するもので、年収がこの壁を超えると配偶者や家族の負担が増えます。
配偶者に対する所得控除には、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2つがあります。
年収が103万円までは配偶者控除で、103万を超えると配偶者特別控除と名称が変わります。配偶者特別控除は、150万円まで控除額が一定で150万円を超えると段階的に減額され、201万円を超えると控除が無くなります。このため「201万円の壁」も加えて6つの壁と呼ばれることもあります。なお、配偶者の年収が1,000万円を超えている場合には、配偶者特別控除は適用されません。

<まとめ>

100万円の壁 年収が100万円を超えると、住民税の納税義務が発生
103万円の壁 年収が103万円を超えると、所得税の納税義務が発生
106万円の壁 年収が106万円を超えると、社会保険料の支払い義務が発生(条件あり)
130万円の壁 年収が106万円を超えると、社会保険料の支払い義務が発生(103万円の壁の条件を満たさない場合)
150万円の壁 年収が150万円を超えると、配偶者は配偶者特別控除が受けられなくなる

何を優先するかが大事

扶養内で働く場合と扶養から外れて働く場合には、それぞれメリットとデメリットとがあります。
何を優先するかによって働き方を選びましょう。

扶養内で働くメリットとデメリット
年収100万円未満の場合には、住民税と所得税の負担がありません。年収103万円未満の場合には「配偶者控除」が、年収150万円までは「配偶者特別控除」を受けることができます。年収106万円未満の場合には、条件にもよりますが社会保険料の負担がありません。このように扶養内で働く場合には、さまざまな税金や社会保険のメリットがあります。
また、家事や育児にかける時間も多く取れ、家庭と仕事との両立がしやすいというメリットもあります。

一方で、社会保険の被扶養者となる場合には、受給できる健康保険の給付金や手当、保障に制限があったり、将来受け取れる厚生年金の額が少ないといったデメリットがあります。

扶養外で働くメリットとデメリット
扶養外で働くことのメリットは、世帯の収入が増えることです。税金や社会保険料の負担はありますが、将来受け取る年金額が増えたり、病気やケガで仕事を休んだ時の傷病手当金や出産手当金を受け取ることもできます。また、労働時間を制限せずに働くことで、責任ある仕事を任せられたりキャリアアップの可能性も増えます。

デメリットとしては、扶養から外れると税金や社会保険料の負担が増えることで、その負担分を上回るためには年収150万円以上を目指して働かなくてはなりません。また労働時間が増えることで、家事やプライベートのための時間も限られてくるため、時間の使い方や体力面での負担なども増えてくるかもしれません。

まとめ

2021年10月から地域別最低賃金がアップしました。これによりパートタイムで働いている方は、扶養から外れてしまう可能性があります。
扶養内で働く場合と扶養外で働く場合とでは、それぞれメリットとデメリットがあります。時間や収入、将来の安定、スキルアップなど、何を優先させるかによってご自身に合った働き方を検討してください。

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