人事/経営

2021.08.20

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中小企業が「パワハラ防止法」に取り組むべき理由

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労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が改正され、2020年6月1日に施行されました。パワハラ防止法では、職場おけるパワーハラスメント対策を大企業だけでなく、中小企業にも義務付けています。
中小企業のパワハラ対策が義務となるのは令和4年4月1日からですが、企業の担当者は今から対策に取り組む必要があります。

厚生労働省が定義するパワハラとは?

厚生労働省では、次の3つの要素をいずれも満たすものを職場のパワーハラスメントと定義しています。

1.優位性を背景に行われること
行為を受ける社員が、パワハラをする人に対して抵抗または拒絶することができない関係に基づいて行われる。

2.業務必要な範囲を相当超えて行われること
その行為が明らかに業務上の必要性がない、またはその行為が業務に相応しくないもの。

3.身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
行為を受けた社員が身体的もしくは精神的に圧力を加えられて負担と感じること、またはその行為によって行為を受けた社員の職場環境が不快なものとなって、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、社員が働く上で看過できない程度の支障が生じること。

参考:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」

パワハラの種類

具体的には、どのような行為がパワハラになるのでしょうか。パワハラの6つの種類と具体例を紹介します。

身体的な攻撃(暴行・傷害)
上司が部下に対して殴ったり蹴ったり、物を投げたりするのがパワハラに当たります。
また、お酒を強要するのもパワハラです。しかし、業務上関係のない同僚どうしの喧嘩はパワハラに該当しません。

精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
上司が部下に対して、人格を否定するような言動を行うとパワハラに該当します。
人格否定には、性的指向や性自認に難する侮辱的な発言も含まれます。
また、業務上の事であっても必要以上に厳しい叱責を長時間行う、他の社員の前で大声で威圧的に𠮟責する、能力を否定する内容のメールを本人を含む複数の社員に送信するなども、精神的な攻撃に該当します。

一方で、遅刻など社会人としてのルールを守れないことに対して、再三注意しても改善されない社員に対して、一定程度強く注意するのはパワハラにはあたりません。

人間関係からの切り離し
意にそわない社員に対して、仕事を外したり、長期間にわたって別室に隔離したり、自宅研修にすることはパワハラ行為に該当します。
ただし、新入社員を育成するために短期間集中的に、別室で研修を行うことはパワハラにはなりません。

過大な要求
達成できそうもない過大なノルマを与えて、未達成に対して激しく叱責する行為はパワハラになります。
また、業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わせることも該当します。
ただし、社員を育成するために現状より少し高いレベルの業務を任せることはパワハラではありません。

過小な要求
管理職である部下を退職させるために、誰でも遂行できる受付業務や清掃業務などに配置転換することはパワハラです。
また、気に入らない社員に対する嫌がらせのために、仕事を与えないのもパワハラに該当します。
ただし、能力に応じた一定程度の業務内容や業務量の軽減、経営上の理由により一時的に能力に見合わない簡易な業務を担当させることはパワハラにはなりません。

個の侵害
思想や信条を理由として、集団で特定の社員を監視したり、ロッカーを無断で点検する、私物を写真撮影するような行為はパワハラにあたります。
ただし、異動先を配慮するために社員の家族の状況について聴くことはパワハラではありません。

パワハラ防止対策に取り組むメリット

中小企業がパワハラの防止対策に取り組むことは、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に定められた義務ですが、取り組むことによって企業には、さまざまなメリットがあります。


人材を確保できる
社員にとって職場の人間関係の良し悪しは、働きやすい環境かどうか大きく左右します。パワハラのない職場では、人間関係についての問題が大きく減ります。
社員が生き生きと働いている姿が、求職者に伝われば応募が増えて優秀な人材を採用しやすくなります。

生産性が高まる
パワハラ防止に取り組むことは、職場内のコミュニケーション活性化につながります。
仕事についての相談を、上司や同僚に気兼ねなくできる雰囲気であれば、課題がすぐに解決して生産性が向上します。

様々なリスクを回避できる
パワハラ対策は法律上の義務ですが、もし放置してパワハラが行われた場合、企業には不法行為責任などの法的な責任が課せられる可能性があります。
また、パワハラの事実が社外にも知られた場合には、企業イメージの低下により信頼や信用を失うことになりかねません。

まとめ

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)によって、令和4年4月1日から中小企業もパワハラ対策が義務となります。今回の記事で紹介した通り、パワハラ防止に取り組むことは企業にとってメリットがあります。
一方で、企業内でパワハラが行われた場合には、離職率が増加したり、社会的な信用を失うなどのリスクがあります。法的義務というだけでなく、積極的にパワハラ防止に取り組みましょう。

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