注目の高まる新しい働き方「ワーケーション」とは?
政府が働き方改革を推進する中で、テレワークなど新しい働き方や生活様式が定着しつつあります。こうした環境の中で、余暇を楽しみながら働く新しいライフスタイル「ワーケーション」が注目されています。この記事では、ワーケーションが注目された理由や、ワーケーションのメリットやデメリットについて解説します。
コロナ禍で注目されたワーケーションとは?
「ワーケーション」は、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、リゾート地や観光地で仕事をしながら、休暇を楽しむというものです。
ワーケーションが注目された理由
ワーケーションは、もともとはアメリカで2000年代に始まった働き方です。日本では新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって注目されるようになりました。新型コロナの流行によって、通勤時間や車内での人との接触を避けるため、通勤時間や場所の制限を受けずに、インターネットを活用して自宅などで働くテレワークの導入が急速に進みました。
東京商工リサーチが企業を対象に調査した結果では、1回目の緊急事態宣言では56.4%の企業がテレワークを実施しています。緊急事態宣言の解除後には、実施率は低下していますが、多くの業種で業務をテレワークに移行しても支障がないとわかり、一定程度テレワークは定着してきています。
テレワークの浸透を契機に働き方が大きく変わる中で、観光庁も「新たな旅のスタイル」として、ワーケーションと、出張先で滞在を延長するなどして業務後にレジャーを楽しむ「ブレジャー」の本格的な推進を始めました。観光庁では、その推進策として「新たな旅のスタイル」ワーケーション & ブレジャーのロゴマークを作成し、ホームページで公開して企業に導入を呼びかけています。
ワーケーションの種類
2020(令和2)年に実施された「観光戦略実行推進会議」で配布された資料には、日本型ワーケーションとして次の4つのタイプが紹介されています。
②出張の前後に休暇やレジャーを付けたす(ブレジャー)
③オフサイト会議や団体での研修にアクティビティを組み込む
④サテライトオフィスやノマドワーカーなど日常的に仕事と休暇を重ねて織り込むスタイル
このように、ひとことでワーケーションと言っても、いろいろなスタイルがあるので自社の事情に合ったワーケーションの導入を検討することが大切です。
ワーケーションのメリット

日本では、ここ数年で注目されるようになったワーケーションですが、そのメリットとデメリットには、まだ不透明な部分があります。ワーケーションの導入には、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。
休暇取得の促進
お盆休暇や年末年始休暇など、会社が一斉に休みとなるタイミングを除いて、自分だけ休暇を取るというのは上司や同僚に気兼ねしてなかなか休めないものです。しかし、ワーケーションは完全に休むのではなく、休暇を楽しみながらも仕事も行えるため、長期休暇が取得しやすくなります。
働き方改革による労働基準法の改正で、2019年4月から企業は従業員に年に5日の年次有給休暇を取得させることが義務づけられました。年次有給休暇の確実な取得に、ワーケーションは有効な手段と考えられます。
従業員満足度(ES)の向上
ワーケーションの導入は、従業員の働き方の選択肢を広げ、ワークライフバランスの実現による満足度の向上が期待できます。企業が従業員の生活の質の向上に貢献することは、従業員満足度(ES)を向上させ、離職の防止だけでなくモチベーションアップによる生産性の向上も期待できます。
また、オフィス以外で仕事をすることによって、ストレスの軽減や心身のリフレッシュができ、健康の維持・促進効果も期待できます。
チームワークの強化
先ほどワーケーションの種類について説明しましたが、ワーケーションの中にはオフサイト会議や団体での研修にアクティビティを組み込むスタイルのものもあります。このようなワーケーションを行うことで、普段のオフィス勤務とは違ったコミュニケーションが生まれます。
従業員同士が食事やアクティビティなどの仕事以外の時間を共有することで、普段は生まれない共感を感じたり、コミュニケーションが活性化することで、チームワークの強化が図れます。
採用力強化
少子高齢化による労働人口の減少や労働市場環境により、人材の確保は企業にとって大きな経営課題となっています。近年は、政府が進める働き方改革の影響もあって、求職者は給与や賞与など待遇面だけでなく、企業が従業員に対してどのような働き方を推進しているのかに注目しています。
ワーケーションの導入は、求職者にとって魅力的な制度に感じるため、企業の大きなアピールポイントとなります。企業の採用力強化により優秀な人材の確保が目指せるでしょう。
ワーケーションのデメリット

ワーケーションの導入にはメリットだけでなく、いくつか課題もあります。導入を検討する際には、課題についてしっかりと確認しておきましょう。
労働時間の管理や人事評価など制度の見直しが必要
テレワークでは、従業員はオフィス以外の場所で働くことになるため、正確な労働時間や仕事の進捗状況の把握が課題となっています。ワーケーションでは、そこにさらに休暇の時間が組み込まれるため、テレワーク以上に管理が難しくなります。
ワーケーションを取得したものの、仕事が忙しくて休暇の時間が全くない、適性に仕事の評価がされていないなどの状態になると、会社に対して不満を感じワーケーションの導入が逆効果になってしまいます。
また、通勤手当や通勤中の労災の扱いなど、労務管理に関するさまざまな制度を見直す必要があります。この見直しが現場の人的・時間的なコストとして負担になることが考えられます。
セキュリティ面のリスク
場所にとらわれず仕事ができるのはワーケーションの魅力のひとつですが、オフィス以外の場所で仕事をするということは、セキュリティ面でのリスクを伴います。書類や仕事用のパソコンの盗難や紛失、フリーWi-Fiに接続することで情報を抜き取られるなど、個人情報や機密情報が流出してしまうリスクがあります。
ウイルスソフトの導入など企業側の対応だけでなく、ワーケーションを導入する際には、従業員一人ひとりに対してセキュリティ対策の重要性を周知することが大切です。
社内でのコミュニケーション減少
ワーケーションでオフィス以外の場所で仕事をするということは、対面でのコミュニケーションの機会が減ることになります。zoomやSkypeなどのオンライン会議システムを使って、ミーティングを行うことは可能ですが、パソコンの画面を通じたコミュニケーションでは、細かな表情や仕草などが伝わりません。
また、オフィス内であれば。他の仕事中や休憩時間でも、ちょっとした会話はできますが、オンラインでは双方がミーティング時間を設定する必要があるため、時間的に逆に非効率になるケースもあります。一方で、邪魔をされずに1人で仕事に集中できることから、業務の種類によってはメリットとなる場合もあります。
導入コストがかかる
オフィス以外の場所で仕事を行うためには、インターネット環境やデバイス、オンライン会議システム、チャットツールなどの導入が必要になります。すでにテレワークを導入していて環境が整備されている企業には負担がありませんが、これから新たに環境を整備する企業にとっては導入コストが大きな負担となります。
ONとOFFの切り替えに時間がかかる
休暇を楽しみながら仕事ができるワーケーションですが、ONとOFFの切り替えが難しいと感じる方もいるかもしれません。また、周りに第三者がいないと仕事に集中できないという場合も考えられます。ワーケーションでONとOFFの切り替えが上手くできるようになるには、慣れるまで少し時間がかかる可能性があります。
まとめ
導入後には、制度を有効活用できるように、企業側がワーケーションの課題や問題点を洗い出して、修正して従業員が利用しやすい制度にすることが重要です。ワーケーションを上手く導入して、従業員満足や生産性、採用力の向上を目指しましょう。